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Web制作会社の工数・原価・粗利管理:経理・管理部門が押さえるべきポイント

なぜ工数・原価・粗利管理が重要なのか?

Web制作会社にとって、プロジェクトごとの「収支構造」を正確に把握することは経営の根幹です。しかし現場の実態としては、売上だけでなく「工数=人件費の使われ方」や「外注費・ソフトウェア費用などの原価」が曖昧なままになっており、結果として「実際の粗利が見えていない」状態が珍しくありません。
これは単なる管理部門の業務負担ではなく、経営判断の精度に直結する重大な課題です。

本記事では、経理・管理部門の視点から「見える化されていないコスト」がどのようなリスクをもたらすかを紐解きながら、解決のための考え方や仕組みづくりについて解説します。


Web制作業における「工数」と「原価」の特殊性

工数の不透明さが招くリスク

Web制作業では、プロジェクトの原価の多くが「人の時間=工数」によって構成されます。
しかし現場では、以下のような状態が珍しくありません:

  • タスクの記録が担当者に委ねられている
  • 実績工数と見積工数に大きな乖離がある
  • 複数案件を横断的に担当しており、プロジェクト別工数集計が困難
  • 営業・ディレクターの稼働が計上されていない

このような状況では、「本当は赤字なのに黒字に見える」「想定よりも手離れが悪い案件を放置してしまう」といったリスクが発生します。

原価構成の複雑化と把握困難性

制作案件では、以下のような多様な費用が原価に含まれます:

  • 外注(デザイナー・コーダー・カメラマンなど)への支払
  • 有料フォントやストック素材などのライセンス費用
  • 使用するSaaSツールの月額費
  • 社員の人件費(ただし明確に配賦できない場合が多い)

これらを案件単位で管理しないと、「プロジェクト単位の収支分析」や「粗利率の比較」ができず、経営的に何が効率的なのかの判断ができません。


経理・管理部門に求められる「プロジェクト単位の収支把握」

経理・管理部門において、従来のように会社全体のPLや月次決算を見るだけでは不十分です。
なぜなら、制作現場では1案件の収支が非常に短期間かつ多様であり、月単位の集計では判断が間に合わないからです。

そのため、以下のような粒度での可視化が求められます:

  • プロジェクトごとの「見積」「実工数」「外注費」などのデータを一元管理
  • 工数と人件費を紐づけ、労務原価を自動算出
  • 各案件の粗利率をダッシュボードで見える化
  • 異常値(例:予定より工数150%超過など)へのアラート設定

つまり、管理部門は「会計処理」だけでなく「原価分析と意思決定支援」に踏み込むことが求められているのです。


なぜ工数・原価・粗利の管理がうまくいかないのか?

1. 業務の属人化・手作業依存

多くの会社では、工数の記録や原価配賦が「Excel管理」や「現場からの自己申告」に頼っています。
この場合、以下のような問題が発生しがちです:

  • 人によって記録粒度やルールが異なる
  • 記録漏れ・後追い入力による精度の低下
  • 管理部門が手作業で集計するため工数が膨大
  • 間違いが起きても検証や修正が困難

業務の属人化は「ブラックボックス化」を招き、経理的に非常に危険な状態です。

2. ツールが分断されていて情報が連携していない

制作現場では「BacklogやNotionでタスク管理」「freeeで会計処理」「Googleスプレッドシートで原価集計」といったように、業務ごとに別ツールが使われているケースが多いです。
これにより、以下のような弊害が起こります:

  • データ連携ができず、手作業で転記が発生
  • 各ツールの定義が違い、分析時に整合性がとれない
  • 現場との認識齟齬が起きやすい

情報のサイロ化は、経営レベルでの判断ミスに直結します。

3. 収支分析が後追いになってしまう

多くの制作会社では、「月次決算が出るのは翌月中旬」「原価が確定するのは月末締め」など、収支が“後からしか見えない”状況にあります。
これでは、以下のような問題が解消できません:

  • 赤字案件に気づいたときにはすでに終わっている
  • 稼働が膨らんでいる案件を途中で止められない
  • キャッシュフローを見誤る

リアルタイム性の欠如は、経理部門の限界ではなく仕組みの問題なのです。

プロジェクト単位での原価・粗利を一元管理する「仕組み」づくり

経理・管理部門がWeb制作における工数・原価・粗利の実態を正確に把握するには、単に「頑張る」「Excelを工夫する」といった方法では限界があります。
必要なのは、現場との情報の壁を越えて「全体を通して収支が一気通貫で見える仕組み」を構築することです。

1. 工数×人件費で“リアルタイム原価”を算出

社員やパートナーの作業時間(工数)を、案件・タスク単位で日々記録し、その時間に応じた人件費を自動で原価として計算する仕組みが必要です。
例えば、以下のような設定が理想です:

  • 時間単価を職種別に事前設定(ディレクター¥5,000/h、デザイナー¥3,000/h など)
  • 社員ごとの稼働状況をリアルタイムで可視化
  • 各プロジェクトに配賦される人件費が自動計算される
  • 原価率や粗利率がプロジェクトごとに表示される

この仕組みがあることで、「何にどれだけ人件費がかかっているのか?」が正確にわかり、粗利の悪い案件に早期に気づくことができます。

2. 外注費・ツール利用料をプロジェクトに紐づける

原価として見落とされがちな「外注費」や「ツール利用料」も、案件単位で適切に管理する必要があります。
例えば:

  • 見積時点で発生予定の外注・ツールコストを仮原価として登録
  • 実際の支払額と突き合わせて原価精度をチェック
  • プロジェクト単位で外注比率・外注費率を分析し、利益構造のパターンを把握

これにより、「外注に頼りすぎると粗利が低くなる」「あるツールを使うと制作効率が上がる」など、経営判断に直結する知見が得られます。

3. 会計システムと連携し、経理業務も効率化

原価や工数の管理は現場寄りの話のように思えますが、実際には経理業務にも強く関係しています。
例えば、以下のような効果があります:

  • 売上・原価・粗利の三点セットが帳票化され、月次処理がスムーズに
  • 計上ミスが減り、仕訳の属人化が排除できる
  • プロジェクト損益の推移を会計と連携しながら確認できる

これにより、単なる「会計処理担当」から「事業支援型経理」へのシフトが実現します。

4. 「プロカン」による一元管理の実現

こうした仕組みをExcelやスプレッドシートで構築するのは非常に困難であり、人的ミスも多発します。
そこで有効なのが、プロジェクト型ビジネスに特化したERPである「プロカン」の導入です。

プロカンなら:

  • 工数記録・人件費自動配賦・外注費管理を一元化
  • プロジェクトごとの収支をリアルタイムにグラフで可視化
  • 経理処理と収支データが連携し、仕訳・請求・入金管理まで完結
  • 見積→案件管理→原価→粗利→会計処理までを一気通貫で管理可能

これにより、管理部門の手間を大幅に削減しながら、収益性の高い事業運営が可能になります。


制作現場と経理が連携したことで見えた“本当の利益構造”

ここでは、実際に「プロカン」を導入したWeb制作会社A社(従業員30名・案件月10件規模)の変化を紹介します。

Before:見えていなかった“損益の真実”

A社では以下のような課題がありました:

  • 案件単位の利益が感覚的にしか把握できていない
  • 工数はBacklogで、原価はExcelで、経理はfreeeでバラバラ管理
  • 月次で原価を集計するのに5営業日以上かかっていた
  • 赤字案件の発見が納品後になることも多く、対策が後手に回っていた

経理部門は「もっと早く、もっと正確に知りたい」と感じていたものの、現場とのデータ連携がうまくいかず、限界を感じていたそうです。

After:プロジェクト原価の見える化がもたらした行動変容

プロカン導入により、以下のような変化が生まれました:

  • 工数記録が統一され、稼働状況と人件費がリアルタイムで把握可能に
  • 外注費・ツール費用もプロジェクト単位で可視化
  • 経理部門がダッシュボードで案件別の粗利率を即座にチェックできるように
  • 原価率が高すぎる案件は月中で発見・対処が可能になり、手戻り工数が削減

さらに、経理部門からのデータ提供により、営業が見積時点で“赤字になる可能性”を予測し、事前に対応するという連携も始まりました。


経理・管理部門から収益構造を変えるために

「収支の見える化」は、もはや経営者や現場の責任だけではありません。
経理・管理部門が正確な原価と粗利を把握し、経営判断に必要な“数字の地図”を提供することが求められています。

プロジェクト別の工数・原価・粗利管理を自動化・一元化し、「事業を支える経理」にシフトする第一歩として、「プロカン」の導入をご検討ください。