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イベント制作会社の収支の見える化:PM/ディレクターが押さえるべきポイント

Cheerful business team celebrating their success in the office and giving a high five together, successful financial chart in the foreground

なぜ「収支の見える化」が今求められているのか

イベント制作の現場では、華やかな表舞台とは裏腹に、裏方の収支管理が属人化・不透明化しやすい構造にあります。特にPMやディレクターにとって、「このプロジェクト、本当に利益が出ているのか?」という問いへの確信が持てないまま日々の業務に追われているという声も少なくありません。

プロジェクト型ビジネスであるイベント制作では、個別案件ごとに原価構成が異なるため、全体の予算感を把握しづらいのが実情です。しかし、収支の状況がブラックボックスのままでは、利益を最大化するどころか、赤字案件に気づけないまま納品を終えてしまうことも起こり得ます。

本記事では、イベント制作会社のPM/ディレクターが直面しやすい収支管理の課題とその解決策、そして具体的な運用例を踏まえながら、「収支の見える化」をどう実現していくかを解説します。


プロジェクト管理と収支がつながっていない現場の実態

イベント制作業界では、案件ごとに求められる進行・演出・演者・機材・協力会社などの要素が複雑に絡み合い、プロジェクト単位の管理が基本となります。しかし、進行管理やタスク管理ツールが普及する一方で、「実際にいくらかかったのか」「利益率はどのくらいだったのか」という財務的なアウトプットは後回しにされる傾向があります。

よくあるのが、以下のような状態です。

  • 原価はExcelで各担当者が別々に管理
  • 見積書は営業が作成し、PMはその内容を知らない
  • 実際の外注費や人件費の請求が月末に一括で来る
  • 会計との連携が弱く、収支確認はプロジェクト完了後

このように、進行と収支が別々に管理されているため、進行中の「見通し」が不透明になりやすく、気づいたら赤字案件になっていた…というケースも少なくありません。


PM/ディレクターが陥りやすい3つの収支管理課題

1. 「稼働しているのに赤字」の不合理

クライアント対応や現場対応に多くのリソースを割いたのに、最終的にほとんど利益が残らなかった…という経験はないでしょうか?
PM/ディレクターの稼働原価や外注費が過少見積もりされていると、収支が破綻しやすくなります。

2. 案件単位の収支が後追いになる

プロジェクトが終わった後に初めて「赤字だったことが分かる」ケースでは、次の手が打てません。進行中に赤信号が灯せるような仕組みが必要です。

3. 誰も「全体の収支」を把握していない

見積は営業、原価は制作、請求は経理と分担されていると、プロジェクト全体の「粗利」を誰も管理していない状態になります。これでは再現性のある利益構造が築けません。


収支の見える化が難しい理由とは?

なぜイベント制作では収支の見える化が進まないのでしょうか? 背景には業界特有の構造的な要因があります。

要因1:原価構成が案件ごとに異なる

ナレーターが必要な案件もあれば、装飾費が高い案件もある。定型的なフォーマットで管理しづらく、Excelでは属人化しがちです。

要因2:進行と経理のデータが分断されている

PMが把握しているのはあくまで制作進行。外注費の支払いや請求金額など、経理サイドで初めて明らかになる数字が多く、「見積 vs 実績」の比較が現場レベルでできません。

要因3:システム化が進んでいない

受託型ビジネスに対応したERPやプロジェクト管理ツールの導入が進んでいない企業では、業務プロセス自体がアナログなままです。勘と経験に頼った予算管理では、成長の限界がきます。


システム導入で実現する収支の見える化

では、どうすればプロジェクト単位の収支をリアルタイムに可視化できるのでしょうか。
その答えの一つが、イベント制作に対応した収支管理システムの導入です。

収支管理システムの特徴

  • 見積・原価・請求・収支を一元管理
  • 案件単位で進行と金額をリンク
  • 各フェーズの原価実績をリアルタイムに集計
  • 社内の誰が見ても同じ収支状況が見える

期待される効果

  • 赤字案件を事前に検知できる
  • 原価率・粗利率の基準化が進む
  • 売上だけでなく、利益に対する評価基準が明確に
  • 属人化を排除し、再現性ある収支モデルが構築可能

たとえば、あるイベント制作会社では、プロカン導入後に「稼働単価の見直し」が進み、粗利率が10%以上改善したという結果も出ています。


事例:収支の見える化で変わった制作現場

ここでは、収支管理システムを導入して収支の見える化に成功したイベント制作会社A社の事例を紹介します。

背景:毎月赤字案件が1〜2件発生していたA社

A社は、年間100件以上のイベントを制作する中堅企業です。従来は以下のような課題を抱えていました。

  • 各案件の見積は営業主導で作成され、制作部門には概要のみ共有
  • 外注費や設営費はExcelで管理されており、社内で形式がバラバラ
  • 請求業務は経理部門が行い、PMが収支を把握する手段がなかった

その結果、「イベント自体は成功したのに利益が出ない」プロジェクトが頻発し、経営会議では収支の報告が後手に回っていました。

取り組み:システム導入による全案件の収支一元管理

A社は以下のようなステップで収支管理システムを導入しました。

  1. 案件ごとの原価・売上・工数を収支管理システムに統合
  2. 見積時点でPMと営業が共同で予算設計を行う体制に変更
  3. 制作進行と支出管理を日々記録、進行中でも収支状況を確認
  4. 実績入力はPMと経理の連携でスムーズに運用

これにより、PM自身が進行中に「今どのくらいコストを使っているのか」「このままいくと利益が出るか」を確認できるようになりました。

効果:粗利率10%改善と経営判断スピードの向上

導入から半年後、A社では以下のような成果が得られました。

  • 月平均2件あった赤字案件が0件に
  • 案件ごとの粗利率が10%向上(25%→35%)
  • 原価率が高騰した場合の「即時アラート」で対策可能に
  • 経営層による中間報告の可視化が進み、意思決定スピードが向上

また、PM/ディレクター自身も「感覚」ではなく「数字」で語れるようになったことで、営業部門との連携がスムーズになり、見積段階での無理な価格設定も減少しました。

A社の担当ディレクターは以下のように語っています:

「これまで“なんとなく儲かってる気がする”で進めていたのが、今では“この案件は利益率30%で着地する見込み”と数字で語れるようになりました。自信を持って進行できるようになったのが大きいです」


収支の見える化で、プロジェクトの成果も見える化しませんか?

イベント制作の現場で求められるのは、単なる“進行”ではなく“利益ある進行”です。
プロジェクトごとの収支をリアルタイムで可視化し、PM/ディレクターの判断力を高めることで、会社全体の利益体質も改善されていきます。

「プロカン」は、イベント制作会社の現場にフィットしたプロジェクト型ERP。
収支の見える化を起点に、見積・原価・請求・進行すべてをひとつの画面で把握できます。

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