変化の激しいイベント業界で問われる「決断力」
イベント制作業界は、コロナ禍以降の「オンライン対応」「ハイブリッド開催」などを経て、案件の多様化・短納期化が進んでいます。制作現場のスピード感と変動要素の多さは、経営者の判断力をよりシビアに問う時代になっています。
予算は限られ、現場からは日々「この案件、ほんとに儲かってますか?」という声が聞こえてくる。案件ごとの利益率、リソースの配分、次の営業戦略……あらゆる経営判断の裏には、「正しい情報」と「俯瞰視点」が必要です。
こうした背景のなか、経営判断を支える「予実管理」や「意思決定支援」の仕組みをいかに構築するかが、今後の生き残りのカギを握ります。
経営者の勘と経験だけでは立ち行かない時代
これまでイベント業界では、「社長の勘と経験」によって売上やコスト配分が決まるケースも少なくありませんでした。属人的でアナログな現場感覚に頼った経営が、一定の成功を収めてきた背景もあります。
しかし、以下のような変化が、その限界を突きつけています。
- 案件数の増加と短納期化により、ひとつひとつの収支を追えなくなっている
- アウトソースの比率が高まり、原価の内訳が複雑化
- 「感覚で利益が出ている」から「実際は赤字だった」へというギャップが顕在化
- 補助金や助成金の適用、経理精度の厳格化が求められる
こうしたなかで、「見えていないこと」は「判断できないこと」に直結します。つまり、正しい意思決定をするには、まず「見える化」が前提なのです。
経営判断の土台となる「予実管理」とは何か?
「予実管理」とは、プロジェクトごとに設定した予算(予)と、実際にかかったコストや得られた利益(実)を比較・検証するプロセスです。これにより、以下のような経営的メリットが得られます。
- 赤字案件の早期発見と撤退判断
- 営業戦略(単価設定・案件選別)の最適化
- 優秀なプロジェクトチームの可視化
- 社内コスト(人件費・外注費など)の抑制ポイント把握
イベント制作における「プロジェクト」は、期間も予算も内容もさまざま。だからこそ、1件ごとの精度ある「予実管理」が、組織としての強さにつながります。
イベント制作会社における経営判断のボトルネックとは?
多くのイベント制作会社が抱える経営課題は、以下の3つに集約されます。
1. 案件別の損益が見えない
「売上〇万円の案件」としては把握していても、実際にどれだけ利益が出ているかを即座に把握できる企業はごくわずか。制作メンバーの工数や外注費など、実行予算が後からExcelで集計されるだけでは、赤字の兆候をリアルタイムに察知できません。
2. データが分散し、意思決定に時間がかかる
スケジュールはExcel、見積書はPDF、請求書は会計ソフト、実績は口頭で確認——といった具合に、情報が複数のツールや紙に分散している場合、正しい判断ができるまでに時間と労力がかかります。こうした属人的・分断的な情報管理は、特に中規模の制作会社に多く見られる課題です。
3. 数字が意思決定に活かされていない
数値は蓄積されていても、「過去の数字を見て終わり」になっているケースが多く見受けられます。プロジェクト単位で見込んでいた利益率と、実際の利益率が乖離していた場合、その理由分析がされないまま、同じようなミスを繰り返してしまいます。
収支管理システムが実現する経営判断支援の仕組み
イベント制作会社が抱える「損益の見えにくさ」「分散する情報」「データ活用の遅れ」といった課題に対し、収支管理システムであるプロジェクト型ERPは次のような形で解決を図ります。
1. プロジェクト単位での予実管理が標準装備
収支管理システムでは、案件ごとに「見積額」「予算」「実績(原価・売上・粗利)」を紐づけて管理できます。たとえば以下のような管理が可能です。
- イベントごとの工数・人件費・外注費を原価として紐づけ
- 案件開始前に予算を設定し、実績との差異を自動で可視化
- 原価や売上、粗利の推移をリアルタイムで把握可能
これにより、損益の着地見込みを早期に察知し、必要に応じて追加見積やコスト削減策の判断ができます。
2. 情報が一元化され、意思決定が加速
収支管理システムは、見積・発注・請求・支払・勤怠・工数・経費など、プロジェクトに関わる全データを一元管理します。
- 現場が入力した工数が、即座に原価として反映
- 経理部が入力した支払実績が、プロジェクトの実績データとして統合
- 経営層がダッシュボードで全プロジェクトの状況を俯瞰
つまり、経営者が欲しい「全体の収益構造」が、リアルタイムかつ整理された状態で常に確認可能になるのです。
3. 過去データの分析と再現性のある戦略設計
収支管理システムでは、過去の類似プロジェクトと現在の案件を比較することで、見積・予算の精度が高まります。
- 「同規模・同業種の案件で粗利が最も高かった構成は?」という視点で分析
- 外注先ごとの原価傾向や利益率も可視化され、コストパフォーマンスを定量的に判断
- 「成功パターン」の型化により、案件の再現性が向上
感覚に頼った属人的なノウハウではなく、ナレッジとして組織に蓄積・展開できるようになります。
システム導入による経営判断の進化
ここでは、ある中堅イベント制作会社の導入効果を紹介します。
導入前:Excelと勘に頼る「限界経営」
- 売上は増加傾向だったが、なぜか利益が伸びない
- プロジェクトの原価を精緻に把握できておらず、赤字に気づくのは月末
- 部門ごとに使っているツールが違い、全体像が把握できない
経営者の頭の中には「案件ごとにざっくり儲かっているだろう」という感覚はあったものの、経理部門と制作部門との間で数字が合わず、判断を遅らせる原因となっていました。
導入後:プロジェクト単位での損益管理とスピード経営の実現
- システムで全案件の予算と実績を一元管理
- 工数・原価・外注費が即座に粗利に反映され、リアルタイムで収支状況を把握
- 見積単価の根拠が明確になり、営業部門がより自信を持って提案
- 部門横断の数値共有により、会議の意思決定が迅速に
結果として、年間粗利は前年対比120%に改善し、赤字案件の割合は約40%から15%へ減少。また、経営会議では「感覚ではなくデータをもとに議論できる」ことで、次の打ち手にスピード感が出たと評価されています。
まずは資料ダウンロードから、経営改善の一歩を
「なんとなく利益は出ているが、正確な数値が見えない」
「営業・制作・経理の感覚がバラバラで議論にならない」
「次の経営判断が、どうしても勘頼りになっている」
——そんな悩みを持つイベント制作会社の経営者にこそ、「プロカン」をご活用いただきたいと考えています。
プロジェクトごとの収支管理、原価の可視化、ナレッジ化された意思決定の仕組みは、イベント制作というスピードと多様性が求められる業界において、大きな武器になります。