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映像制作会社の経理業務の効率化・属人化排除:経営者が押さえるべきポイント

映像制作会社における経理業務の現実

映像制作会社の経理業務は、他業種と比べても特有の煩雑さがあります。案件ごとに発生する外注費・人件費・機材費、時には交通費やロケ地費用まで細かく管理しなければなりません。加えて、プロジェクトごとに異なる予算管理や請求スケジュールに対応する必要があり、単なる会計処理だけでは済まない高度な業務が求められます。

こうした状況の中で「属人化」が進むと、特定の担当者しか把握していない勘定処理やフォルダ管理、独自ルールが増え、引き継ぎが困難になりがちです。担当者の急な退職・休職、業務量の偏りは会社全体のリスクへと直結します。

そのため今、映像制作業界においても「経理業務の効率化・属人化排除」は経営層が積極的に取り組むべき最重要課題のひとつになっています。


なぜ今「経理の属人化」を解消すべきなのか?

かつては「経理は手作業が基本」「長年勤めているベテランに任せれば安心」という考え方が通用していました。しかし昨今では、以下のような環境変化により、属人化が大きな経営リスクへと変わってきています。

業界のスピード感と労働環境の変化

映像制作業界では短納期・多案件同時進行が当たり前となり、経理業務の処理スピードと正確性が問われます。また、テレワークやハイブリッドワークの導入により、紙ベースの処理や口頭伝達に頼る体制はすでに限界に達しています。

ベテラン依存によるブラックボックス化

「この処理は〇〇さんしかわからない」「データの保管場所が人によってバラバラ」といった属人化の典型例は、経営判断のスピードを遅らせ、情報の透明性を損ないます。突発的な退職や引継ぎミスが致命傷となりかねません。

複雑なプロジェクト収支の見える化ニーズ

映像制作会社は案件ごとの収支構造が複雑で、工程単位・外注先単位での費用把握が求められます。にもかかわらず、Excelと紙の帳票を駆使した管理ではリアルタイム性や正確性に限界があります。

こうした背景から、「人に依存しない経理体制」と「業務の可視化・平準化」を実現する仕組みが急務となっています。


経理業務の効率化・属人化排除が経営にもたらす3つのインパクト

経理業務の効率化と属人化排除に取り組むことは、単なる「業務改善」ではなく、経営全体にポジティブな変化をもたらします。以下の3つの観点から、そのインパクトを具体的に見てみましょう。

1. 経営判断のスピードアップ

月次決算や案件別収支の集計が迅速化され、リアルタイムで損益が見えるようになることで、次の打ち手を迷いなく打てるようになります。これにより、赤字案件への早期対応、収益性の高い事業へのリソース集中が可能になります。

2. 担当者離脱時のリスク低減

クラウドERPや管理会計ツールを導入することで、経理のルールやフローを標準化できます。これにより、担当者の急な離職や休職があっても、業務の継続性を担保できます。

3. 生産性の向上とコスト削減

重複業務や確認作業の手間が減ることで、少人数でも多くの案件を効率的に処理できます。これにより外注依存を減らしたり、残業削減によるコスト圧縮も期待できます。


映像制作会社が抱える経理業務の属人化の実態

映像制作会社においては、特に以下のような経理業務が属人化の温床となっています。

案件ごとの原価集計と勘定振替

案件単位の収支が曖昧なまま、請求書の管理や仕訳作業を行っているケースが多く、後から「本当に黒字だったのか」が分からないという声も少なくありません。

外注費・交通費・ロケ費の手作業計算

領収書を紙で回収・入力している場合、人為的ミスや処理遅延が常態化しやすくなります。手元のExcelにしか記録がないということも。

管理台帳の独自フォーマット運用

Excelで管理している台帳が属人化しやすく、他の人が見ても「どこを見ればいいのか分からない」構造になってしまっていることがしばしばあります。

複数ツールへの入力の二重化

請求書はExcel、仕訳は会計ソフト、工数は別システム、といったバラバラな管理体制では、転記ミスや業務の無駄が多くなります。

これらの課題は一見細かく見えますが、積み重なることで重大な経営リスクやキャッシュフローの誤認につながる可能性があります。


経理の属人化を防ぎ、業務を効率化するための実践的アプローチ

映像制作会社が経理業務の属人化を防ぎ、効率的な体制を築くには、ツールの導入だけでなく、業務プロセスや組織体制の見直しが必要です。ここでは、現場で再現可能な4つの解決策をご紹介します。

1. プロジェクト単位の収支管理を前提としたERPの導入

経理業務を効率化する第一歩は、プロジェクトごとに「見積 → 原価計上 → 請求 →入金」までを一気通貫で管理できるERPを導入することです。

たとえば「プロカン」のようなプロジェクト収支に特化したERPでは、案件別に原価・工数・請求状況を一元化できるため、担当者が個別にExcelを更新したり、社内で都度確認を取る必要がなくなります。

加えて、税区分や勘定科目もテンプレート化されているため、簿記の知識が浅くても正確な処理が可能になります。

2. 会計ソフトや請求書発行ツールとの連携

会計ソフト(例:freee、マネーフォワード)や請求書発行ツール(例:Misoca、マネーフォワードクラウド請求書)とAPI連携することで、請求書データや支払いステータスがリアルタイムで同期され、手入力の二重作業や転記ミスを大幅に削減できます。

これにより、経理担当者の作業工数が減るだけでなく、経営層にとっても「入金状況の見える化」が実現し、資金繰りの判断が迅速に行えるようになります。

3. 業務フローの見直しとドキュメント化

属人化を防ぐには、「誰がやっても同じ品質で処理できる」業務フローの構築が欠かせません。例えば以下のように業務の標準化を行うことが重要です。

  • 作業工程をマニュアル化(図解・スクショ付き)
  • タスク管理ツール(例:Backlog、Trello)で業務を可視化
  • 月次処理・締め日のスケジュールをチームで共有
  • 紙書類は極力廃止し、クラウド保存で一元化

標準化が進むことで、新任者への引き継ぎもスムーズになり、担当者の退職リスクを最小限に抑えられます。

4. 経理業務に対する「チームの意識改革」

「経理は裏方業務だから…」と軽視されがちですが、映像制作会社においても経理は事業運営の根幹を担っています。経理情報が可視化されれば、営業も制作も「自分たちがどれだけ原価を使っているか」「どの案件が収益に貢献しているか」を把握できるようになります。

これにより、会社全体で収支改善への意識が芽生え、経理担当者に業務が偏ることなく、持続可能な体制が構築されていきます。


属人化を解消し、業績改善につなげた映像制作会社のケース

ここでは、実際に経理業務の属人化を解消し、組織全体の効率化と業績向上につなげた映像制作会社の事例を紹介します。

A社:少人数経理でも月次決算を3営業日で完了

東京都内で30名規模の映像制作会社A社では、長年ベテラン経理担当者1名に業務が集中しており、月次決算は毎月15日を過ぎてからやっと完了するという状態でした。

そのため、経営会議では常に1か月以上前の数字をもとに議論せざるを得ず、キャッシュフローの悪化や赤字案件の発見遅れが続いていました。

しかし、2023年に「プロカン」を導入し、以下のような改革を行ったことで劇的な改善が見られました。

  • 請求・支払・仕訳・予実管理を一元化
  • 業務をWBS化し、進行中のタスクを可視化
  • 新人でも対応可能な操作マニュアルを作成

結果として、月次決算は導入前の10営業日から3営業日以内に短縮。経営層がタイムリーに事業判断を行えるようになり、案件の収益率も全体で15%向上したといいます。

B社:担当者退職後も業務が止まらなかった仕組み化の力

地方都市で10名規模の映像制作を手がけるB社では、経理担当者が突然退職するという事態に直面しました。

かつてはExcel台帳と紙の領収書で管理しており、他のスタッフが内容を読み解くのに膨大な時間がかかっていましたが、「属人化リスクをなくそう」とERP導入と業務フローのドキュメント化に取り組んでいたおかげで、社内メンバーだけでスムーズに業務を引き継ぐことができました。

この経験を経て、代表は「仕組みこそ最大のリスク対策である」と語っています。


経理体制の強化は、事業の継続性と成長戦略の土台

経理業務の効率化・属人化排除は、単に経理部門だけの話ではなく、映像制作会社全体の事業運営や未来の成長に直結するテーマです。

「毎月の数字が見えない」「経理担当に頼り切っていて不安がある」「急な退職で業務が止まるかもしれない」

そう感じている経営者の方は、今こそ業務改善の第一歩を踏み出すタイミングです。

まずは自社の経理業務の属人化度合いを棚卸し、どこから改善できるかを可視化するところから始めてみてください。

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