経理・管理部門が見積・請求・契約管理で抱える「見えないコスト」
Web制作会社において、プロジェクト型ビジネスは柔軟性と創造性が重視される一方、経理や管理部門にとっては多品種少量の案件処理が常態化し、業務負担が年々増加しています。特に、案件ごとの見積作成や請求書の発行・管理、契約締結といったフローは、営業や制作チームと連携しながら正確かつ迅速に進める必要があり、対応を誤るとキャッシュフローに影響するリスクもある重要な業務です。
こうした煩雑な業務に共通するのが、「属人化」と「分断化」という課題です。本記事では、見積・請求・契約管理の重要性を整理し、経理・管理部門が陥りやすい落とし穴と、統合的な管理によって得られる成果、そしてその実現手段について詳しく解説していきます。
なぜいま、見積・請求・契約管理の見直しが急務なのか
DXが進む中で、Web制作業界にも業務の標準化と自動化の波が押し寄せています。しかし、実際の現場では「スプレッドシートでの手入力」「印刷・押印による紙ベースの契約」「Excel見積書とPDF請求書の分離管理」など、旧態依然としたやり方が多く残っているのが実情です。
こうした運用では、以下のような問題が表面化しがちです。
- 担当者が退職した途端に管理台帳の中身が分からなくなる
- 複数の請求書フォーマットが乱立し、請求漏れや重複が発生
- 契約書の保存がバラバラで、法務リスクや監査対応に支障が出る
- 月末月初に業務が集中し、働き方改革の足かせになる
特に、経理や管理部門は「発生した売上の正確な把握」「請求タイミングの統一」「契約に基づいた請求条件の厳守」といった義務を負っているため、こうした問題のしわ寄せが最終的に経理側に集中する構図となります。
だからこそ、いまこそ“業務の仕組み化”を前提とした管理体制の再設計が必要なのです。
経理視点で見る、見積・請求・契約管理の本質的な目的とは?
経理部門がこの3つの業務を管理するうえでの本質的な目的は、単なる「書類作成」ではなく、企業の収益構造を正しく把握し、キャッシュフローの安定性を高めることにあります。
- 見積管理:プロジェクト収益を見立て、事業計画や予実管理に活かす
- 契約管理:取引条件・範囲・責任の明確化によってリスクを防止する
- 請求管理:正確・適切なタイミングでの入金を確保し、資金繰りを安定させる
この3つの業務が分断されると、「契約外の業務を無償で引き受けていた」「入金確認ができていなかった」「追加対応の請求が漏れていた」といった事態に陥りかねません。経理の立場だからこそ見える“利益を守る”視点から、統合管理の必要性を訴求することができます。
経理・管理部門が直面する現場のリアルとその影響
1. 業務の属人化とブラックボックス化
例えば見積書の作成。営業担当がExcelで個別に作成し、ファイル名や保存場所がバラバラになっているケースは多く見られます。修正履歴が残らないため、どのタイミングで金額が変わったのかも分からず、契約と請求書の金額が食い違う事態に。経理がチェックする段階では、もはや修正の余地がない場合もあります。
契約管理でも、社内共有されていない契約書がメール添付で個人管理されていたり、紙でしか残っておらず、いざというときに見つからないという問題が日常的に起きています。これは監査や顧客対応の面でも致命的です。
2. 業務の重複と時間的コストの肥大化
見積書・契約書・請求書をそれぞれ別フォーマットで管理し、担当者が都度転記している場合、プロジェクト1件ごとに多くの手間が発生します。請求時に前提条件を再確認する手間や、発行ミスによる差し戻しも頻出し、全体の処理件数に対して大幅なタイムロスが生じてしまいます。
このような業務構造のままでは、繁忙期や急なトラブル対応に耐えられず、属人化の危険性をさらに高めることになります。
3. 情報の分断による経営判断の遅れ
経理部門は、売上・原価・利益をタイムリーに把握する必要がありますが、見積・契約・請求がバラバラに管理されていると、プロジェクトごとの粗利や回収状況をリアルタイムに追えません。これでは予実管理はおろか、収支シミュレーションにも支障が出てしまいます。
業務の一元管理と“見える化”を実現するには?
1. 経理起点で設計された業務プロセスの再構築
まず必要なのは、「誰が」「どこで」「何を管理しているのか」を明文化することです。見積作成から契約締結、請求発行、入金確認までを一連の流れとして捉え、各ステップの責任者と作業内容を整理することで、情報の分断を防ぐ土台が整います。
ここで重要なのが、“経理視点”からプロセス設計することです。例えば以下のような整理が必要です。
- 契約が締結されていないと請求書を発行できない仕組み
- 契約金額と見積金額が一致していないとエラーになるワークフロー
- 入金消込のステータスが共有されていないと次請求が止まる自動制御
2. 専用システムの導入による一元管理の実現
属人化と分断を防ぐには、システムによる一元管理が最も有効です。例えば「プロカン」のようなプロジェクト型業務向けERPでは、見積書の作成から契約締結、請求書発行、入金確認までを一貫して管理できます。
- 見積→契約→請求→入金の各プロセスをプロジェクト単位で紐付け
- 顧客情報・取引条件をマスタ管理し、過去取引履歴を参照可能
- 契約済案件しか請求できない設計でヒューマンエラーを防止
- 月次や案件別の回収・未収・粗利の可視化により経営判断を支援
業務を“流れ”で管理することで、経理や管理部門だけでなく、営業・制作・経営層とも共通言語で連携ができるようになります。
プロカン導入で見積・契約・請求管理を再構築したWeb制作会社
あるWeb制作会社では、以前まで見積書は営業がExcelで個別作成し、契約はPDFを印刷して紙で管理、請求書は経理が別途発行するという、完全に分断された体制でした。
トラブルも多発し、実際に「契約内容にない追加作業」を見積に反映し忘れ、請求金額が顧客と食い違って大幅な損失につながるケースもありました。
導入後は以下のような成果が得られました。
- 全案件の見積・契約・請求が一元管理され、担当変更があっても業務継続が可能に
- 契約ベースで請求処理が行えるため、請求漏れ・二重請求をゼロに
- 月次締め作業が平均1.5日短縮
- 経理・営業・制作の三者でリアルタイムに収支を確認でき、予実管理も容易に
このように、単なる効率化にとどまらず、組織全体の“利益体質”を育てる改革となりました。
請求・契約業務の見える化に興味がある方へ
プロジェクトごとの見積・契約・請求を一貫して管理し、業務の属人化と分断を解消したいとお考えの方へ。
「プロカン」では、Web制作会社に特化した管理機能を多数備えています。