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Web制作会社の工数・原価・粗利管理:経営者が押さえるべきポイント

Web制作業界は、創造性と技術を駆使してクライアントの要望を形にする、非常にやりがいのある仕事です。一方で、プロジェクトごとの納期やコスト、外注先との連携、社内メンバーの稼働調整など、マネジメントの難易度も高くなりがちです。案件が完了してみると「思ったより利益が出ていなかった」「想定より時間がかかってしまった」といった反省点が残ることも少なくありません。

これは単なる現場レベルの問題ではなく、企業の収益構造を揺るがす深刻な経営課題に直結します。特に、工数(人的リソース)、原価(外注費・経費等)、粗利(収益性)という3つの要素がブラックボックス化していると、経営者は正確な判断を下すことができません。

そこで今回は、Web制作会社が陥りがちな工数管理・原価管理の課題を洗い出し、どのように可視化と改善を図るべきか、その方法と導入のポイント、そして導入後の効果を詳しく解説していきます。経営の質を一段引き上げたい方にとって、必読の内容です。


なぜ今「収支の見える化」が必要なのか

Web制作会社の経営者が直面する大きな課題のひとつが、案件ごとの損益が不透明なままプロジェクトが進行し、気づいたときには赤字だったという構造的な問題です。多くの場合、「売上は立っているのに利益が残らない」「スタッフは忙しそうだが利益率が低い」といった症状として現れます。

Web制作業はその特性上、受注生産型であり、案件ごとに必要な工数やコスト構造が大きく異なります。加えて、複数案件が並行して進行するため、誰がどの案件にどれだけの時間を使っているのかが見えづらく、原価や粗利を正確に把握することが困難です。

このような状況では、正しい経営判断を下すことが難しくなり、気づかぬうちに会社全体の利益構造が崩れてしまう危険性があります。今こそ、工数・原価・粗利をリアルタイムに可視化し、数字に基づいた意思決定を行う体制づくりが求められているのです。


なぜ今、制作業に管理会計が求められるのか

従来の制作会社では、月次決算や部門別の収支で経営を判断するケースが一般的でした。しかし、プロジェクト単位で収益が変動するWeb制作のビジネスモデルにおいては、それでは遅すぎるのです。実際に粗利が見えた頃には、プロジェクトは終わっており、次に活かすには数ヶ月のタイムラグが発生してしまいます。

そのため、案件ごとに「計画(予算)」「実行(実績)」「比較(予実差異)」を繰り返し管理していく“プロジェクト別の管理会計”の考え方が求められています。売上だけでなく、コスト構造を把握したうえで利益を確保するには、日々のオペレーションに組み込まれた見える化が必要不可欠です。

また、リモートワークの拡大や業務委託スタッフの増加により、従来の感覚的な管理が限界を迎えていることも背景にあります。組織の規模にかかわらず、「数字で語る経営」を実践する企業ほど安定した成長軌道を描いているのは、これらの可視化と改善が仕組み化されているからに他なりません。


現場と経営がズレていく3つの兆候

Web制作会社が抱える問題の多くは、実は日々の業務の中にヒントがあります。以下のような悩みを抱えている場合、それは経営と現場の間に情報の断絶が起きているサインかもしれません。

  • 案件ごとの工数が適切に把握できず、進捗や負荷の見通しが立てられない
  • 外注費や人件費などの原価を案件単位で把握できず、採算が不明瞭
  • 終了した案件の粗利を把握できず、次回見積や受注判断に活かせない

このような状態では、どれだけ案件をこなしても「忙しいのに儲からない」状況から抜け出すことができません。では、なぜこうした問題が起きるのでしょうか?次章では、その構造的な原因を掘り下げていきます。


工数・原価・粗利が見えない理由

工数管理が属人的で断片的

多くの現場では、スタッフが自分の作業をExcelやGoogleスプレッドシートに記録していたり、日報ベースで報告していたりします。しかし、これではプロジェクト単位で集計するには手間がかかりすぎ、結局「なんとなく」の数字で判断されることになります。

さらに、実績データが蓄積されないため、見積の精度が上がらず、過去の失敗を繰り返すリスクが高くなります。

原価管理が部門別・期間別で終わっている

会計上の処理は月次や部門別にまとめるのが一般的ですが、制作業においては「案件別」の視点が欠かせません。特に外注費、ツール利用料、交通費などの直接原価を案件に紐づけていないと、どの案件が儲かっていて、どれが赤字なのか判断がつきません。

その結果、「なんとなく黒字」「感覚的にやばい」状態から脱せず、改善施策が打てないという問題に直結します。

粗利率の可視化が後手に回る

粗利率は経営判断の命綱ですが、原価と工数が見えていなければ計算はできません。さらに、粗利の可視化が月末や四半期単位にとどまっている場合、案件終了後にようやく赤字に気づく、という構造が常態化してしまいます。


収支管理を“見える化”するために

工数管理:リアルタイムトラッキングでPDCAを回す

まず重要なのは、「今、誰がどの案件に何時間費やしているか」をリアルタイムで把握することです。たとえば「プロカン」では、スタッフが日々の作業をタスク単位で記録でき、案件単位で自動的に集計されます。これにより、進行中でも「このままでは予算超過になる」といったアラートが可能になり、経営者は早期の是正判断ができます。

また、実績が残ることで、次回の見積やリソース配分の根拠が明確になり、会社全体のPDCAサイクルが加速します。

原価管理:案件ベースのコスト紐付けを徹底

原価管理では、「発注」「外注」「経費精算」「交通費」などの各種コストを、案件ごとに紐付けることが必要です。プロカンでは、帳票を案件単位で管理できるため、日々の経理業務の中で自然とコストが蓄積されていきます。

これにより、案件単位での原価構造が自動的に構築され、粗利の把握がリアルタイムで可能になります。結果として、経営のスピードと精度が格段に向上します。

粗利管理:受注前後でのシミュレーションと検証をセットに

粗利率を改善するには、事前と事後の比較が不可欠です。受注前には、想定工数やコストをもとに「この案件を受けるべきか」のシミュレーションを行い、受注後は実績と比較して乖離を分析します。

プロカンではこの一連の流れを一元化できるため、「見積は甘かったのか」「人員配置に問題があったのか」といった振り返りが簡単に行え、次の案件に学びを活かせます。


今こそ経営に“見える化”を

忙しいだけで利益が残らない時代は終わりにしましょう。工数・原価・粗利の可視化によって、Web制作業の経営は「感覚」から「数字」へと進化します。

プロジェクト単位での収支管理を強化することで、赤字を未然に防ぎ、優良案件への注力が可能になります。さらに、組織全体の収益構造を整え、持続可能な成長を支える土台を築くことができます。