はじめに:広告宣伝費と原価の関係を見直す
制作会社において、クライアントからの依頼に基づく制作物だけでなく、自社サービスやブランドを周知するための広告宣伝活動もまた、事業成長の重要な一環です。
しかし、この「広告宣伝費」が、どのように会計処理されるべきか、また原価管理にどう影響するのか、正しく理解されていないケースが多く見受けられます。
本記事では、広告宣伝費の勘定科目としての扱いを明確にしつつ、制作会社特有のプロジェクト単位での費用管理において、広告宣伝費をどう位置づけるべきかを丁寧に解説します。
1.広告宣伝費とは?勘定科目上の位置づけ
広告宣伝費とは、企業が自社商品・サービスの認知度向上を目的として行う宣伝活動に要する費用のことです。これには以下のようなものが含まれます。
- チラシやポスターなど印刷物の制作費
- Web広告、SNS広告、リスティング広告の出稿費
- テレビ・ラジオ・雑誌等のマスメディアへの広告出稿費
- 展示会への出展料
- ノベルティや販促物の配布費用
勘定科目としては、「販売費及び一般管理費(販管費)」に分類され、具体的には「広告宣伝費」や「販売促進費」という勘定科目が使われます。
この分類により、売上原価には含まれないというのが原則ですが、制作会社のようにプロジェクト型で業務を行う企業にとっては、この区分が一筋縄ではいきません。
2.制作会社における広告宣伝費の特徴
制作会社が広告宣伝費を計上する際、一般的には次のようなケースが想定されます。
- 自社ブランディングや新規営業活動にともなう広告出稿
- 自社の実績をまとめたポートフォリオサイトの運営・リスティング
- 採用活動や広報としてのSNS活用
これらはすべて「販管費」の扱いとなりますが、問題はプロジェクト単位の原価管理を行う場合です。
たとえば「ポートフォリオ用動画の撮影」に社内スタッフが1日稼働したとします。この工数を原価として扱うべきか、販促費として仕訳すべきかで処理は分かれます。
ここで重要なのは、どの費用が案件収益に直結し、どの費用が将来的な売上貢献を目的とするかを明確に区分することです。
3.広告宣伝費が原価管理に与える影響
「広告宣伝費=販管費」という仕訳処理は制度会計上では正しくとも、管理会計=原価管理という視点では一歩踏み込んだ分析が求められます。
特に制作会社の場合、
- 案件ごとの利益率が低い
- プロジェクトごとに社内人材が複数稼働する
- 広告宣伝費と労務費が混在する作業が多い
といった事情があるため、「人件費の按分」「社内稼働の目的別管理」が極めて重要です。
たとえば以下のような視点での費用分析が求められます。
活動内容 | 勘定科目 | 原価管理上の分類 | コメント |
---|---|---|---|
クライアント向け広告動画の制作 | 売上原価 | プロジェクト原価 | 納品物の一部として扱う |
自社サービス紹介動画の制作 | 販管費(広告宣伝費) | 管理原価(社内) | 将来の案件獲得を目的 |
採用活動用ポスター制作 | 販管費(求人広告費) | 間接費 | 広告宣伝とは異なる分類 |
このように、勘定科目の分類を超えて「目的に応じた費用分類」が必要となり、それを支える仕組みが必要です。
4.「プロカン」による広告宣伝費の見える化

「プロカン」は、プロジェクト型ビジネスに特化したERPシステムとして、広告宣伝費を含むすべての費用を、案件単位・目的単位で一元管理できます。
プロカンの活用でできること:
- 案件別の工数・費用登録
案件に応じて、工数と費用を分けて管理。 - 広告宣伝費の履歴・予実管理
月次や四半期ごとの広告宣伝費を可視化。費用対効果の分析が可能に。 - 販管費・原価の自動仕訳連携
設定したルールに基づいて、勘定科目ごとの仕訳を自動生成し、会計ソフトに連携。 - 社内向け稼働の見える化による労務費の適正配分
広告宣伝活動にかかった人的コストを明確にし、他の原価との混同を防止。
広告宣伝費を「見える化」することで、費用対効果の分析がしやすくなり、将来的な投資判断も精度を高められます。
5.広告宣伝費を軽視しない経営判断へ
広告宣伝費は、売上に直接紐づかないため「無駄なコスト」と見なされがちです。
しかし、制作会社においては“未来の売上を作る投資”であり、軽視すべきではありません。
「どの広告が効いているのか」「どのメディアが費用対効果が良いのか」「社内制作物の工数は適切か」を分析できなければ、効果的な打ち手を講じることは難しいでしょう。
そのためには、「原価管理」と「広告宣伝費管理」を分断せず、一貫したデータ基盤の上で統合的に捉える必要があります。
まとめ:広告宣伝費もプロジェクト収支の一部として管理を
広告宣伝費は、ただの販管費ではありません。
制作会社のようなプロジェクト型ビジネスでは、その一部が「見えにくい原価」として利益を圧迫しているケースも少なくありません。
「プロカン」のようなERPシステムを活用することで、広告宣伝費を正確に把握・管理し、将来の売上に直結する投資判断を支えることが可能になります。
広告宣伝費を正しく分類し、原価管理と連携させることで、より健全で持続可能な経営判断が可能になるのです。