クリティカルパスとは?求め方を理解してプロジェクト管理に活用しましょう

クリティカルパスとは?求め方を理解してプロジェクト管理に活用しましょう

クリティカルパスという言葉を聞いたことはあっても、プロジェクト管理の上でどのように考えればよいかわからない方も多いのではないでしょうか。クリティカルパスとはクリティカルパスの考え方であるクリティカルパス法(Critical Path Method, CPM)はプロジェクト管理の基本的な手法です。

クリティカルパス法を活用すれば、より適切にプロジェクトを管理できるようになります。現代ではツールの補助を受けながら簡単にクリティカルパスを求められるため、一度やり方を覚えれば個々のプロジェクトに応用しやすいでしょう。

この記事ではクリティカルパスの基本情報から求め方までわかりやすく解説します。

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クリティカルパスとは?

クリティカルパスの考え方は1950年代に開発され、プロジェクトの適切な計画や重要なタスクの明確化を可能にする手法として普及しました。開発から長い年月が経つものの、非常に基本的かつ効果的な手法であるため、現代でも幅広い分野で用いられています。

クリティカルパスを明らかにすると、プロジェクト全体のスケジュールに大きく影響する重要なタスクがわかります。多くのタスクが含まれタスク相互の関係が複雑なプロジェクトを管理する上で、クリティカルパス法は強い味方になるでしょう。

クリティカルパスの考え方をよく知るために、まずはクリティカルパスとは何か基本情報を確認してみましょう。

プロジェクトの工程で最も時間のかかる最長経路のこと

クリティカルパスとは、プロジェクトの工程で最も時間のかかる最長経路を意味します。言い換えれば、複数に分岐する工程の流れの中で、プロジェクトの最初から最後まで進行させるのにかかる所要時間が最長になる経路です。

クリティカルパスの性質上、プロジェクトが最短で完了する日数は、クリティカルパスに含まれるタスクが全て終了する日数と同じになります。

クリティカルパスがわかると、工程の中で遅延させられないタスクがわかります。また、プロジェクトにかかる最短日数もわかるので、プロジェクトのスケジュール管理がしやすくなります。

さらに、タスクの見直しやツールの導入などによってクリティカルパスに必要な期間を短縮できれば、プロジェクト全体の日数も短縮できるでしょう。

クリティカルパスはリソースを適切に割り振り、品質・コスト・納期を最適化する工程管理の基礎ともなる考え方です。より高度なプロジェクト管理をするためにも、クリティカルパスの考え方は役立ちます。

クリティカルパスの遅延はプロジェクト全体の遅延になる

クリティカルパスはプロジェクトの工程で最も時間がかかる経路であるため、クリティカルパスが遅延するとプロジェクト全体が遅延します。

プロジェクトの進捗が遅れると納期の遅れにつながりやすく、クライアント・自社双方の不利益となります。また、複数人・複数社が絡む複雑なプロジェクトで遅延が発生すると、同僚や外注先を含む関係者の多くに迷惑がかかります。

進捗や納期の遅れは信用問題につながりかねません。関係各所に迷惑をかけずプロジェクトをスムーズに進め、納期を守るためにも、クリティカルパスを適切に把握して進行させることが重要です。

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クリティカルパスを料理で例えてわかりやすく解説

料理の作り方を参考にクリティカルパスの考え方を確認してみましょう。今回はカレーライスの調理を1つのプロジェクトと見立ててクリティカルパス法を解説します。

今回のカレー調理には以下のタスクが必要であると想定します。

  • ごはんを炊く:40分
  • 材料を切る:5分
  • カレーを作る:30分
  • 盛り付けをする:5分

短時間で効率的にカレーライスを作るためにタスクの進め方を整理してみましょう。

工程を全部順番にやるのは非効率

カレーを作るのに必要な工程をすべて順番に行うのは非効率です。上記の作業時間をもとにすれば、順番に作業すると全体で80分かかってしまいます。

しかし、後述しますが、このカレー作りは適切にプロジェクトを進行させれば最短45分で終わらせられます。差し引き35分は非効率なプロジェクト進行による無駄です。

プロジェクトのスケジュールを短縮するには、次項から説明するように並行して行えるタスクと並行できないタスクの見極めが重要です。タスク同士の関係を把握して効率的にプロジェクトを進めましょう。

並行して行えるものは同時進行で進める

並行できる作業は同時進行すると時間短縮ができます。カレーライスの例では、ご飯を炊きながら材料を切り、カレーを作れば料理全体にかかる時間を大幅にカットできるでしょう。

仕事でも同様の場面は多々あります。例えばAさんが書く文章とBさんが作るビジュアルをもとに資料を作る場合、可能であれば2人同時に作成してもらった方が時間短縮になります。また何らかの部品の調達でも、複数の部品を同時に調達した方が組み立てまでの日数は短縮できるでしょう。

プロジェクトに必要なタスクを把握したら、同時に進められるタスクがないか確認してみましょう。

タスクの中には並行できないものもある

タスクの中には並行して進められないものもあります。カレーライスの例ではカレー作りと盛り付けは並行させられません。また、炊飯と盛り付けを同時に行うのも不可能です。

盛り付けは先行するカレーを作る作業やごはんを炊く作業が終わらなければ着手できないからです。このようにあるタスクの完了後にのみ別のタスクが行える関係を依存関係といいます。

タスクの中には複数のタスクと依存関係を結んでいるものもあります。依存関係はタスクを処理する順番を決定する要素です。プロジェクトを管理する上では工程表などを作成してタスクの依存関係を把握し、工程の流れを明確にしましょう。

今回は最低でも45分以上のスケジュールになる

並行できるタスクと依存関係にあるタスクを整理すると、カレー作りのプロジェクトには以下の2つの経路があります。

ごはんを炊く(40分)→盛り付けをする(5分):合計45分
材料を切る(5分)→カレーを作る(30分)→盛り付けをする(5分):合計40分

上記では1つ目の炊飯から盛り付けまでの経路がプロジェクト内で最長の経路なのでクリティカルパスです。また、クリティカルパスにかかる時間が45分なので、カレー作りのプロジェクトが完了するには最短でも45分かかることがわかります。

クリティカルパスの考え方を使えば、効率よく進めた場合にプロジェクト全体でどのくらい時間がかかるか明確になります。クリティカルパス内に遅れが発生した場合も全体の進捗への影響がわかるため、進捗管理にも有効です。

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クリティカルパスを把握するメリット

クリティカルパスの把握はプロジェクト管理にさまざまなメリットをもたらします。メリットを理解しておけば、クリティカルパス法をプロジェクト管理にどう活かせばよいかより明確になるでしょう。ここからはクリティカルパスを把握するメリットを詳しく解説します。

プロジェクト管理を効率的に行える

クリティカルパスを把握するとプロジェクト管理を効率的に行えるようになります。プロジェクトにかかる最短日数や工数を常に把握でき、進捗管理を行いやすくなるからです。

クリティカルパスに含まれるタスクに問題が発生した場合、すぐに対応するようにすれば、プロジェクト全体の遅れを最小限にしやすいでしょう。

また、クリティカルパスが明確になっていれば、プロジェクト期間を短縮する「ファストトラッキング」や「クラッシング」などの手法も効果的に使えます。

ファストトラッキングとは後続するタスクを先行するタスクと同時に行い、プロジェクト全体の遅延を防ぐ方法です。後続するタスクと先行するタスクは本来順番通りに行うものなので、ファストトラッキングには手戻りのリスクがあります。また複数のタスクを同時に行う状況になりやすいので作業者の負担は増大します。しかし、成功すればプロジェクトの遅れをリカバーできる手法です。

一方クラッシングは、重要なタスクにリソースを追加して必要な時間を短縮する方法です。リソースを新たに投入する以上、予算などが追加で必要になりますが、クラッシングを効果的に用いればタスク処理にかかる時間を短くできます。

ファストトラッキングもクラッシングも乱用はできませんが、トラブルによる遅延が発生した場合には使わざるをえないときもあります。

2つの手法は非クリティカルパスのタスクに使ってもほとんど効果がありません。非クリティカルパスのタスクは全体のスケジュールに影響しにくいからです。両方ともクリティカルパスに含まれるタスクに対して使ってこそ真価を発揮します。いざという時に的確にプロジェクト期間を短縮するためにもクリティカルパスの把握は重要です。

リソースを効率的に運用できる

クリティカルパスの把握はリソースの効率的な運用にもつながります。人材や予算はクリティカルパスにあるタスクに投入した方がプロジェクト全体の期間短縮につながるからです。クリティカルパス法はプロジェクト開始前のリソース配分はもちろん、トラブル発生時の緊急的なリソース投入にも役立つでしょう。

また、クリティカルパス法を活用してスケジュール管理ができていると、遅延させられないタスクが発生するタイミングも把握できます。タスク開始のタイミングに合わせて必要な人材を割り当てれば、タスクをスムーズに完了させられるでしょう。

複雑なプロジェクトになるほど、工程のどこにリソースを投入するべきかの分析が難しくなります。限られたリソースを効果的に活用するためにも、クリティカルパスの考え方は重要です。

タスクの優先度を明確化できる

クリティカルパスの考え方を用いると、タスクの重要度を理解しやすくなり、優先度が明確になります。クリティカルパス上にあるタスクはプロジェクト全体のスケジュールに与える影響が大きいので、優先して対応するべきだとわかるからです。

多くのタスクが複雑な依存関係を結んでいる大規模プロジェクトでは、タスクの優先度を判断するのも容易ではありません。クリティカルパスを把握していれば、リソースを優先して投入するべきタスクを見つけやすくなるでしょう。

また、プロジェクトを進める際のトラブル回避も可能です。プロジェクト管理者が優先度の高いタスクをきちんと把握しリソースを集中すれば、プロジェクト全体の遅延が発生しにくくなります。さらに、優先度の低いタスクに無駄なリソースを割きにくくなるので、予算不足や作業者の疲弊も防げます。

ボトルネックの回避ができる

クリティカルパスが明確であればボトルネックの回避もしやすくなります。ボトルネックとは工程の中で進捗が停滞したり、生産性が低下したりして、プロジェクト全体に悪い影響を与える部分です。

ボトルネックが発生すると他のタスクが順調に進んでいてもプロジェクト全体の遅延につながるため、なるべく回避しなければなりません。

ボトルネックがプロジェクトに深刻な影響を与えるのはクリティカルパス上で発生した場合です。クリティカルパスを把握していれば、クリティカルパス上でボトルネックが発生しないよう、事前にシミュレーションや対策ができます。

また、プロジェクト全体のスケジュールが明確になっているので、ボトルネックが発生しても早めに改善に向けた取り組みができます。結果としてプロジェクト全体の遅延を防ぎ、スムーズに進行させることができるでしょう。

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クリティカルパスの求め方

クリティカルパスの概要がわかっても、実際のプロジェクトでどのように求めればよいかわからない方も多いでしょう。ツールを使えば手順を自動化できる場合もありますが、たとえツールを使うとしても、クリティカルパスの基本的な求め方は知っておくのがおすすめです。

クリティカルパスは以下の手順で求めます。

クリティカルパスを求める手順
  • WBSを使ってタスクをリストアップする
  • タスクの依存関係を明確にしてPERT図を作成する
  • タスクごとの期間を算出する
  • 最長経路に基づいたクリティカルパスの作成を行う
  • フロートを算出しておく

ここからはそれぞれの手順を詳しく解説します。

WBSを使ってタスクをリストアップする

まずはプロジェクトに必要な全てのタスクをリストアップしましょう。リストアップにはWBSを活用すると効果的です。WBS(work breakdown structure)とは作業分解構造図とも呼ばれ、タスクを階層的に整理するのに用いられます。

WBSでツリー状にタスクを整理すれば、抜け漏れが発生しにくく、タスク同士の関係もわかりやすくなります。

リストアップする際には、プロジェクトに必要なタスクを漏れなく洗い出すのが重要です。洗い出したタスクをもとに後の手順でクリティカルパスやプロジェクト全体の日数を割り出すからです。

付帯的な作業も含めて、必要なタスクは全てリストに含めましょう。また、タスクが重複しないようにするのも大切です。洗い出しの段階ではタスクの優先度や期日を考える必要はありません。

リストアップするタスクは細かすぎると管理する上で扱いにくいため、8時間以上80時間以下の作業時間で完了できるまとまりにするのが一般的です。洗い出したタスクはタスク同士の親子関係をもとにツリー状に整理しましょう。

タスクの依存関係を明確にしてPERT図を作成する

次はWBSをもとにタスクの依存関係を明確にしましょう。タスク同士の関係を整理して、どのタスクが並行でき、または並行できないかをわかりやすくします。

タスクのネットワークと工程を可視化する図としてPERT(Program Evaluation and Review Technique)図があります。PERT図は「アローダイアグラム」とも呼ばれ、作業タスクを丸で表し、丸同士を矢印で結合して工程の流れを明らかにするフローチャートです。

タスクを時系列に並べ、タスク同士の依存関係を矢印で可視化しましょう。PERT図があればプロジェクトの全体像を把握し、クリティカルパスを求めやすくなります。

タスクごとの期間を算出する

完成したPERT図で工程の流れを把握したら、タスクごとに必要な期間を推定しましょう。タスクごとの所要時間によってクリティカルパスの期間も変化するため、精度の高い推定が必要です。

過去のプロジェクトの実績や業界の標準的な作業時間をもとに、なるべく根拠をもって所要時間を割り出してください。タスクごとの所要時間はPERT図にわかりやすく記入しておくと、クリティカルパスを求める際に役立ちます。

実際にプロジェクトを進行させる際にも細かなスケジュールを把握しやすくなるので、算出結果をPERT図に反映させておきましょう。

最長経路に基づいたクリティカルパスの作成を行う

できあがったPERT図をもとにクリティカルパスを求めましょう。PERT図ではタスク同士が矢印でつながり、いくつかの経路ができているはずです。

1つずつ経路に沿って各タスクに必要な期間を足していきましょう。プロジェクトの最初から最後まで期間を足して、必要日数が最長になる経路がクリティカルパスです。

またクリティカルパスに必要な日数が、プロジェクトを最短で完了させられる日数でもあります。ここまででプロジェクト全体のスケジュールが簡易的にわかります。

フロートを算出しておく

前の手順まででプロジェクトの最短日数がわかったのでフロートも算出しておきましょう。フロートとは、後続するタスクに影響が出ないタスクごとのスケジュールの余裕を意味します。

フロートが明確になっていると、プロジェクトのリスクやトラブルに対応できるスケジュールの柔軟性がわかります。フロートを算出する方法には、「トータルフロート」と「フリーフロート」の2種類があります。

トータルフロートとは、プロジェクト全体のスケジュールが許す範囲で、ある作業の開始を遅らせられる期間です。タスクを「最も遅く開始できる時間」から「最も早く開始できる時間」を引くか、「最も遅く終了する時間」から「最も早く終了する時間」を引くことで計算できます。

トータルフロートを算出するには、プロジェクト全体のスケジュールからそれぞれのタスクの最も遅い開始・終了時間を逆算しておくとスムーズです。

フリーフロートとは、後続のタスクの開始を遅らせない範囲で、先行する作業の開始を遅らせられる期間です。工程の経路が合流するポイントにあるタスクは依存関係にあるタスクが複数あるため、先行するタスクの終了する時期が相互に異なる場合があります。

先行するタスクの終了時期にズレがあれば、先行するタスクのうち早く終了するものはズレの分だけスケジュールに余裕が持てることになります。フリーフロートはこの余裕を計算するものであり、工程の経路が合流するポイントの手前にあるタスクのみで算出できます。

フリーフロートは後続するタスクが「最も早く開始できる時間」から、先行するタスクが「最も早く終了する時間」を引くことで計算できます。

どちらの計算方法でもあらかじめフロートを明確にしておけば、予期しないトラブルが発生したときでもスケジュール調整をしやすいでしょう。また、先送りにできないタスクも明らかになるので、クリティカルパスにないタスクの優先順位もつけやすくなります。

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クリティカルパスを把握して適切なプロジェクト管理を

今回はクリティカルパスの求め方について解説してきました。クリティカルパス法はプロジェクト管理の基本となる手法です。プロジェクトのうち遅延させられないタスクがわかり、全体の最短スケジュールも明確になるので、プロジェクト管理がより効率的になります。

クリティカルパスを把握すればタスクの優先順位がつき、リソースの効果的な運用もしやすくなるなど多くのメリットを得られるでしょう。また、クリティカルパスの進捗を注視しておけば、プロジェクトの遅れを早期に発見できます。

思いがけないトラブルが発生した時も、プロジェクトを短縮する手法をクリティカルパス上で用いれば、効果的なリカバリーが可能になるでしょう。

クリティカルパスは手作業で把握しようとすると手間がかかりますが、現代ではツールを使って簡単に求められます。クリティカルパスを求めて、適切なプロジェクト進行に役立ててください。

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