制作進行と収支管理は両立できるか?
広告制作会社のPM/ディレクターは、企画・演出・デザイン・納品の進行管理だけでなく、クライアント調整や外注先との連携、スケジュールや品質の担保など、多くの業務を一手に担います。その中で「この案件、最終的にいくら利益が残ったのか」「どのプロジェクトが赤字だったのか」といった基本的な収支の把握が、実は曖昧なまま進んでしまっているケースは少なくありません。
なぜなら、現場が扱う収支は“経理”がまとめるものという暗黙の前提がある一方で、プロジェクト単位で日々動き続ける制作の世界では、リアルタイムにお金の動きを把握しなければ判断や改善に活かせないからです。
本記事では、広告制作会社のPM/ディレクターに向けて、「収支の見える化」を現場視点からどう実現していくべきか、どのように取り組めば負荷なく運用できるかを深掘りして解説します。
現場の判断が“収支の盲点”を生む
「想定より外注費が膨らんだ」「当初の見積もりと乖離があった」「利益は出たけど工数がかかりすぎた」――これらは多くのPMやディレクターが直面してきた課題です。しかし、それらが事後的にしか判明しないのは、“収支の実態がプロジェクト進行中に見えない”ことが大きな原因です。
一方、経営陣から見れば、「利益が出ていない」「黒字なのにキャッシュが足りない」「稼働率に対して粗利が低い」といった視点でプロジェクト評価を行います。このギャップを埋めるには、PM/ディレクター自身が「収支の見える化」に取り組む必要があります。
そのためには、プロジェクトごとに、
- 売上(受注金額)
- 外注費(演出・撮影・編集・ナレーションなど)
- 内部工数(稼働した人の時間)
- 利益率・粗利
などを“リアルタイムに”把握できる仕組みが不可欠です。
収支の見える化は“現場の強さ”を生む武器
「収支の見える化」と聞くと、経理やマネジメント層向けの話と思われがちですが、むしろプロジェクトマネージャーやディレクターにこそ重要な武器となります。
たとえば以下のような現場判断が、収支データによってより精緻になります。
- 「この工程に外注を使うべきか、内製すべきか?」
- 「追加提案を通せばどれくらいの利益が出るか?」
- 「制作メンバーの負荷と粗利のバランスは適正か?」
実際、制作プロセスが複雑な広告制作の現場では、日々の判断が積み重なって、最終的な収支に大きな差を生みます。つまり、収支が“見える”ことは、単にお金を管理するだけでなく、進行そのものの判断精度を上げる効果があるのです。
PM/ディレクターが抱える“収支の見えない”現実
広告制作会社におけるPMやディレクターは、以下のような理由から、日々の業務で収支管理が“後回し”になりがちです。
1. 案件ごとのコスト情報がバラバラ
発注書や請求書はバラバラに管理され、外注先やフリーランスからの費用感も統一されていない。GoogleスプレッドシートやSlack、Excelなど複数のツールを横断する必要があり、案件単位での原価集計に時間がかかる。
2. 工数と利益の関係が見えない
社内の制作メンバーが何時間かけたか、PM自身がどれだけ稼働したかが記録されておらず、見た目の売上に対して粗利がいくらかが不明。つまり、赤字案件に気づけない。
3. “締め処理”でしか見えない収支
請求書の発行や締め作業のタイミングでようやく収支が見えるため、プロジェクト中のコスト調整や見直しが困難。結果的に赤字を回避できない。
4. 属人化した管理手法
個々のPMやディレクターが独自の管理方法でエクセルなどを使っており、ナレッジが共有されず、再現性がない。
これらの課題により、収支が見えず、改善もできず、次回の見積精度にも影響が出てしまいます。
ERPで実現する収支の見える化
こうした課題に対して、プロジェクト型ビジネスに特化したERPを導入することで、PM/ディレクターが業務と並行して自然に収支を見える化する仕組みを整えることが可能です。
1. プロジェクト単位での原価・売上の一元管理
ERPでは、案件ごとに
- 見積金額(売上)
- 外注先との契約・支払金額
- 社内工数(時間単価×稼働時間)
をまとめて可視化できます。リアルタイムに進行中の案件がどれくらいの原価を消費しているかが分かり、損益が“今この瞬間”に確認できます。
2. 工数管理による粗利の可視化
ERP上では制作メンバーごとの作業時間を簡単に記録でき、工数から原価を自動算出。これにより、粗利ベースで案件評価ができ、単なる売上重視から脱却できます。
3. 見積〜請求〜支払までのプロセスを連携
見積書の内容が、請求書や支払予定にそのまま連携されるため、金額ミスや抜け漏れを防止。収支の整合性が担保され、現場の管理ストレスが激減します。
4. ダッシュボードでの可視化
ダッシュボード上で各案件の進捗、損益、稼働状況などをグラフで把握できるため、経営会議や内部MTGでも即座に数字を共有可能です。
PM主導で収支改善を実現した広告制作会社のケース
ある中堅の広告制作会社では、案件の黒字・赤字を月末の経理報告でしか把握できず、PMの誰がどのような判断をしたのかが不明瞭な状態が続いていました。
そこで収支管理システムを導入し、以下のような改革を行いました。
- 各案件の開始時に予算枠と想定工数を設定
- 外注費・社内工数をプロカン上で日次で記録
- 粗利が一定値を下回るとアラートが出る設計に
結果、数ヶ月後には赤字案件の割合が40%から10%に減少。PMが早期に判断・修正できる体制が整い、利益の最大化と業務効率の両立が実現されました。
収支管理の第一歩は“現場からの見える化”から
収支の見える化は、経営者だけでなく、現場で動くPM/ディレクター自身にとって大きな武器となります。プロジェクト型ERPである「プロカン」を活用することで、制作のクオリティを守りながら、利益も確保できる“強い現場”を作ることが可能です。
まずは自社の課題にフィットするか、資料で詳細をご確認ください。