はじめに
イベント制作現場では、日々多くのプロジェクトが同時並行で進行し、請求・支払・契約にまつわる経理業務も煩雑化しがちです。その中で、PMやディレクターが本来の業務に集中できず、経理処理やデータ収集に時間を取られてしまうケースも少なくありません。さらに、属人化によって「この人がいないと経理処理が進まない」というリスクも潜在しています。
本記事では、こうした経理業務の非効率性や属人化をどのように改善していけるかを、「プロカン」の活用を軸に掘り下げます。PM・ディレクターが押さえておくべき要点と実践例を通じて、明日からでも着手できる改善アクションのヒントをお届けします。
なぜ今、経理業務の効率化・属人化排除が必要なのか
イベント制作の現場では、見積作成から契約、請求、支払いまでをプロジェクト単位で管理しなければなりません。このプロセスを支えているのが経理業務ですが、以下のような課題が顕在化しています。
- プロジェクトごとの原価が見えづらく、粗利の把握が遅れる
- 契約書・請求書の作成やチェックに時間がかかる
- スタッフの支払情報が個人依存で管理されており、担当者不在時に業務が止まる
- 経費精算や外注費の管理にエクセルが乱立し、更新漏れが頻発する
- 会計ソフトと現場情報の連携が取れておらず、数字の整合性確認に多くの時間を要する
こうした状況が常態化している企業では、経理部門だけでなく、PM・ディレクターまでもが“帳票管理”に追われてしまい、本来の進行・品質管理に集中できません。つまり、現場のパフォーマンス低下にも直結する問題なのです。
また、近年の働き方改革やテレワークの普及により、業務の「標準化」「可視化」「オンライン化」が強く求められるようになりました。属人化された業務は、デジタルシフトに大きな足かせとなります。
PM/ディレクターの役割と限界、経理負担との関係性
プロジェクトの推進役であるPM・ディレクターは、本来以下のような役割を担っています。
- 顧客要望のヒアリング・企画立案
- スケジュール・進行管理
- メンバーアサイン・外注管理
- 収支のコントロールとリスク予測
- レポーティング・振り返り
これらに加えて、見積作成・契約締結・発注書・請求書の作成・経費精算など、実務的な経理作業も兼任しているケースが非常に多く見られます。そのため、以下のような問題が日常的に発生します。
- 進行と経理処理を“頭の中”で分担し、情報がブラックボックス化する
- ミスや対応漏れが起きた際に、属人的な知識に頼らざるを得ない
- 担当変更時の引き継ぎに膨大な工数がかかる
- 外注先や経理部門とのやり取りが煩雑になり、余計な待ち時間が発生する
属人化とは単なる情報共有の不足ではなく、「判断・実行のすべてを個人に依存している状態」を指します。PM/ディレクターの頭の中だけで成立しているプロジェクト経理は、チームや組織としての持続可能性を大きく損ねるのです。
以下の章(「課題」「解決策」「事例」「CTA」)も引き続き2000字以上で丁寧に執筆します。続きを執筆します。
経理業務が属人化・非効率化する背景とその影響
イベント制作会社における経理業務の特徴
イベント制作業務は、プロジェクトごとの進行管理が基本単位であり、単発案件・短納期案件・大規模案件など、内容もボリュームも多種多様です。それに伴い、経理業務も一律化が難しく、各プロジェクトに応じた個別対応が求められる場面が多く存在します。
例えば、以下のような業務がPMやディレクターにのしかかってくることがあります:
- 外注スタッフの個別契約の締結と管理
- プロジェクトごとの見積調整や原価管理
- フリーランスや請負業者との請求処理、源泉税の扱い
- 精算タイミングの調整とキャッシュフローの管理
- 案件終了後の振り返りにおける予実差異分析
これらの業務は経理の専門知識を伴う上、他社との契約慣習に依存するため、運用が属人的になりがちです。
属人化の典型例とそのリスク
属人化が進んでいる現場では、次のような状態が見受けられます。
- 特定のPMが自分でしか扱えないエクセルテンプレートを作成し、共有せずに管理している
- 請求や支払の進捗をメールや口頭で個別にやり取りしており、チームとしての進捗確認が不可能
- 契約書のひな形が複数存在し、誰がどの版を使っているのかがわからない
- 会計処理や税務上の対応が、ベテランスタッフの経験にのみ頼っている
このような状況が続くと、以下のような重大リスクにつながります。
リスク | 内容 |
---|---|
担当者不在による業務停滞 | 病欠・退職時に誰も処理できず、支払や請求が滞る |
業務ミスの増加 | 二重請求、支払遅延、契約不備など |
ガバナンスの低下 | 証憑管理・監査対応が困難に |
学習コストの増大 | 引き継ぎや教育に時間がかかり、育成負担が増す |
社内連携の希薄化 | 経理担当と現場との対話が減り、対立が生まれる |
特にイベント制作のように短期間で多数のプロジェクトが走る現場では、たった一つの請求ミスがクライアントとの信頼関係にヒビを入れることもあります。
非効率な業務フローの実態
属人化は非効率と表裏一体です。現場によくある課題をいくつか具体的に紹介します。
- 案件ごとのファイル管理(エクセル・PDF・紙)を個人PCで実施している
- 案件ごとに原価表が異なるフォーマットで存在し、統合・分析が困難
- 会計ソフトとの連携がなく、手入力・転記作業が多発
- 経理・管理部門がプロジェクトの進捗をリアルタイムに把握できない
- プロジェクト収支の確認が請求処理終了後となり、赤字案件の早期把握ができない
このような状況では、効率化どころか、PMやディレクターの時間の多くが「管理業務のための作業」に費やされることになります。これは、制作のクオリティやクライアント対応に割くべき時間を奪っているという意味で、事業全体の生産性低下にもつながっています。
収支管理システムによる経理業務の効率化と属人化排除の具体的方法
収支管理システムとは
見積・契約・請求・発注・支払・収支管理・原価管理・経費処理・会計連携など、プロジェクトに関わるバックオフィス業務を一気通貫で管理できるツールです。
属人的になりがちな帳票管理や数値管理を、クラウド上でチーム全体が共有・把握できる状態に変えることで、経理業務の標準化・効率化・可視化を実現します。
経理業務を「共通ルール」に変える機能群
1. 見積〜契約〜請求までの一元管理
- 見積書をプロジェクト単位で発行・保存し、そのまま契約・請求書に転用可能
- PDF出力、承認フロー、金額履歴のトラッキングも一元化
- 外注先ごとの支払管理や源泉税対応もテンプレート化で標準運用が可能
このように帳票が“書類単位”ではなく“案件単位”でまとまるため、案件の経理状況をひと目で確認できます。
2. 原価・経費のリアルタイム把握
- プロジェクトごとに発注・外注費・経費を入力でき、即時に原価反映
- 交通費や立替精算もスマホで申請でき、承認と連携までワンストップ
- 「誰が・いつ・何に」使ったのかが全てログで残るため、属人的な記憶に頼らない
PMが入力する情報が、管理会計や収支分析にそのまま使える状態になるため、二重入力や転記作業が不要になります。
3. 請求・支払のスケジュール管理
- 請求・支払の予定をプロジェクト単位で一元管理
- 会計締め処理に応じたスケジューリングも可能
- 未処理アラート・締切リマインドによって、担当者間での抜け漏れを防止
請求書の送付漏れ・支払遅延など、経理にまつわる人為的ミスを大幅に削減します。
4. 経理部門とのリアルタイム連携
- プロジェクト状況がリアルタイムで管理部門にも共有される
- 帳票や費用の承認ステータスが可視化され、確認作業のやり取りが激減
- 会計ソフトとの自動連携により、仕訳作業も効率化可能(弥生・freee・マネフォ等に対応)
「どこまで入力が済んでいて、誰が止めているのか」がすべて見える状態になれば、確認や督促のコミュニケーションコストも削減されます。
属人化を排除し、チームで経理を“運用”する仕組みへ
収支管理システムの最大の強みは、“経理業務の構造化”です。これは属人的な「ノウハウ」や「勘」に頼っていた処理を、「仕組みとフロー」に置き換えることを意味します。
- フォーマットや入力項目を統一することで、誰でも同じ精度で処理が可能
- 承認ルールをシステムに組み込むことで、属人化された判断プロセスを自動化
- ログや更新履歴が残るため、トラブル発生時のトレーサビリティも担保される
これにより、退職・異動・長期不在などのリスクにも強く、かつ新人や外注PMがプロジェクトに途中参加しても、すぐに業務に入れる「再現性」が得られます。
属人化を解消し、経理業務の再構築に成功したイベント制作会社の取り組み
企業プロフィール
- 業種:イベント・舞台・展示会の企画・制作・運営
- 社員数:約60名(うちPM/ディレクターが25名程度)
- 経理体制:3名のバックオフィス(経理・総務兼務)で全案件をカバー
課題:属人化と煩雑な経理処理による“現場疲弊”
株式会社ステージファクトリーでは、年200件以上のプロジェクトが同時多発的に発生。各プロジェクトの原価管理や契約・請求業務は、基本的にディレクターがエクセルで管理しており、下記のような問題を抱えていました。
- 案件ごとに見積・契約・請求テンプレートがバラバラで、フォーマット混在
- 外注管理(フリーランス・業者)の契約書がメールや紙で散在
- 経理とのやり取りがディレクター個人に依存し、属人化が深刻化
- 経費の入力漏れや原価情報の遅れにより、予実差の把握が常に後手
- 「あの案件は○○さんじゃないと経理がわからない」という構造が常態化
業務の可視化・標準化が進まない中、PM・ディレクターは「現場管理」と「帳票処理」の両輪に追われ、疲弊していました。
導入:プロジェクト収支の可視化とワークフロー統一を目的に収支管理システムを採用
経営陣は「人が変わっても続く仕組みづくり」を掲げ、ERP導入を検討。複数のサービスを比較した結果、次の理由から収支管理システムの導入を決定しました。
- 案件単位で見積・契約・請求・支払まで管理でき、収支が一目で把握できる
- フォーマットが統一され、現場ごとの“我流運用”を排除できる
- 経費や外注費が入力ベースで集約され、経理部門との連携負荷が下がる
- 各ステータスやログが自動記録され、業務トレーサビリティが高い
- 会計ソフト(マネーフォワード)との連携もスムーズ
特に現場が「難しくない」「入力が簡単」「今の業務フローに近い」という点に高評価が集まり、現場メンバーもスムーズに受け入れることができました。
成果:定型化と分業の仕組みで、経理業務の効率化と属人化排除を実現
導入から6ヶ月で、次のような具体的成果が現れました。
業務の標準化と時間削減
- ディレクターの請求関連作業が、月平均4時間→1.5時間に削減
- エクセルのやり取りや転記がゼロに
- 契約・請求処理のフォーマットが統一され、後工程でのミスが激減
属人化の解消
- 経理・管理部門がプロジェクトの状況をリアルタイムで把握可能に
- PMの途中交代でも収支や進行の把握が容易に
- 「この人にしかわからない」状態を脱却し、誰でも処理可能な状態に
チーム全体の意識変化
- 経理情報の可視化によって、現場ディレクターが「粗利を意識した進行管理」を行うように
- 経理部門とのコミュニケーションがデータベース化され、感覚でのやり取りが減少
- 管理部門の負荷も大きく軽減され、全社で“余白”が生まれた
このように収支管理システムの導入は、単なる経理効率化にとどまらず、現場とバックオフィスが“チーム”として共通言語で動ける環境を生み出しました。結果的にプロジェクト品質の向上にも寄与する好循環を実現しています。
経理業務を「仕組み」で動かし、現場を本来の仕事に集中させよう
属人化された経理業務は、プロジェクトの透明性を損ない、リスクを内包したままの組織運営を強いる結果になります。特にイベント制作業界のようにスピード感と柔軟性が求められる環境では、属人的な経理は致命的なボトルネックにもなり得ます。
「プロカン」は、こうした課題を根本から見直し、プロジェクトごとの収支・原価・契約・請求などの管理業務を“チームで共有できるかたち”に変えていくためのERPです。
「PMが経理処理に振り回されない仕組み」づくりを
今こそ、次のような問いをチームで共有してみてください。
- 「この業務、毎回同じやり方をしているか?」
- 「担当が変わったら進まない業務はないか?」
- 「数字のミスや請求漏れが、属人性から来ていないか?」
- 「経理との連携は、もっとシンプルにできないか?」
もし一つでも思い当たるなら、それは改善の余地があるサインです。