お役立ちコラム

COLUMN

イベント制作会社の工数・原価・粗利管理:経営者が押さえるべきポイント

Document management concept, Businessman using computer to document management concept, online documentation database and digital file storage system or software, records keeping, database technology

なぜ「見えない原価」は経営リスクなのか

イベント制作の現場では、華やかな演出や緻密な進行管理の裏で、膨大な工数と多様な原価が積み重なっています。しかし、それらを正確に把握し、粗利を明確に算出できているイベント制作会社は多くありません。見積と実績の乖離、工数の過少申告、協力会社へのコスト配分の不透明さ……それらが積み重なると、利益は削られ、気づかぬうちに「赤字案件」が常態化するリスクさえあります。

本記事では、イベント制作会社における「工数・原価・粗利管理」の課題を整理し、経営改善につながる実践的なアプローチと、プロジェクト型ビジネスに特化したERP「プロカン」の導入による変革事例を紹介します。属人的な管理体制から脱却し、数字に基づく判断ができる体制構築のヒントを得ていただければ幸いです。


イベント業界特有の「見えにくさ」がもたらす管理の限界

工数が「見積もり」で終わっていないか?

イベント制作の現場では、進行管理台帳やスケジュール表、スタッフアサイン表が「工数管理」の代わりに使われていることがよくあります。しかし、これらはあくまで「予定」の管理であり、「実際にかかった時間」や「誰が何にどれだけ関わったか」を可視化するものではありません。特に社内ディレクター・デザイナー・制作スタッフの稼働は、請求に直結しないため見過ごされがちです。

その結果、本来は数十時間の社内工数を要した案件が「ゼロコスト」として扱われ、実質的な利益率が大きく食われるケースも少なくありません。

原価が「請求書ベース」でしか見られない

協力会社への外注費、会場費、什器・備品レンタル費など、イベント制作の原価は案件ごとに大きく異なります。しかし、それらの原価情報を「請求書ベース」でしか管理できていない場合、発注タイミングや締め処理のズレによって、プロジェクト単位の利益計算が後手に回ります。

また、経理部門が月末・月初に「仕訳」として原価を処理するため、現場のプロジェクトマネージャーや経営者が“リアルタイムでの原価状況”を把握できないまま意思決定してしまうリスクも存在します。

粗利が「感覚値」や「ざっくり概算」に頼っていないか?

たとえば「この案件は300万円の売上だから、だいたい利益は100万くらいかな」といった“経験則”で粗利を判断していませんか?
このアバウトな感覚こそが、赤字案件の温床になりえます。

正確な粗利計算には、「社内工数の人件費換算」+「外注・仕入れ原価の正確な集計」が欠かせません。しかし、これらを毎回エクセルで手計算していると、集計ミス・転記漏れ・属人化が避けられず、結果として「どの案件が儲かっていて、どの案件が赤字か」がブラックボックスになります。

なぜ工数・原価・粗利はうまく管理できないのか?

工数・原価・粗利の重要性を理解していながらも、実際に正確な管理ができていないイベント制作会社は少なくありません。ここではその主要な課題を4つに分けて整理します。

1. 属人的で分断された情報管理

制作現場では、工数や原価情報がエクセルやチャットで個別に管理され、関係者全体で共有されていないケースが多くあります。たとえば、

  • 工数:現場リーダーが個人のGoogleスプレッドで記録
  • 原価:経理部門が請求書ベースで別途管理
  • 粗利:営業担当がざっくり概算で把握

というように、情報がバラバラに管理されていると、案件全体の利益構造が見えなくなります。しかも、こうした情報管理は属人化しやすく、「担当者が辞めたらデータの意味が分からない」といったリスクも抱えています。

2. 工数の可視化がされていない

特に社内スタッフの工数を「原価」としてカウントしていない企業は非常に多いのが現実です。しかし、イベント制作の多くは社内スタッフの企画力や現場対応力に支えられています。この工数が見えないままだと、利益を大きく食う「時間泥棒案件」が温存されてしまいます。

実際には、自社スタッフの人件費や稼働時間を案件ごとに割り振って可視化し、「この案件には何時間・何人が関わったのか」を数値で捉えることが必要です。

3. プロジェクト単位の粗利計算が困難

売上・原価・社内工数のすべてがひもづいてはじめて「粗利」が見えるのですが、多くの企業ではこれらが一元的に管理されていません。たとえば、

  • 見積金額(売上見込み)
  • 実際の発注金額(原価)
  • スタッフ稼働時間(人件費換算)

これらを1つのツール上で連動させていないと、案件が終了しても「結局いくら儲かったか」がすぐに出てこないのです。しかも、請求漏れや発注ミスがあれば粗利はさらにずれ込みます。

4. 数字をもとにした意思決定ができない

「現場が忙しすぎて数字を分析している余裕がない」「会議では売上だけが報告され、利益は議題にならない」といった声もよく聞かれます。これは管理指標が整っていないだけでなく、会社として数字を重視する文化が根付いていない証左でもあります。

意思決定に直結するKPIが不在のままでは、戦略的な判断も属人的で感覚的なものに陥りがちです。


プロジェクト単位で収支を見える化する“仕組み”を構築せよ

工数・原価・粗利の管理が曖昧なままでは、どれだけ営業を頑張っても「忙しいのに儲からない」状態から抜け出せません。ここからは、イベント制作会社が本質的な経営改善を実現するために必要な「収支の見える化」の仕組みづくりについて解説します。

1. 工数管理を“体感”から“数値”へ変える

まず取り組むべきは、社内スタッフ・協力会社の「工数の可視化」です。ここでいう“工数”とは、単なる出勤時間ではなく、「案件ごとに誰が何時間関わったか」という稼働時間の集計です。

理想的な管理とは以下のような状態です:

  • 案件ごとにスタッフの稼働をログとして記録(タイムシート制)
  • 1時間あたりの人件費を設定し、リアルタイムで原価換算
  • 案件終了時に、稼働実績と見積との差異を自動比較

これにより、「この案件は想定よりも稼働が多く、粗利が圧迫された」「ディレクターが他案件の2倍の時間を使っていた」など、今まで“体感”でしか捉えられなかった工数が数値で可視化されます。

2. 原価管理をプロジェクトベースで一元化する

次に必要なのは、発注・支払い・請求などの原価情報をプロジェクト単位で一元管理できる体制です。

従来は以下のような課題がありました:

  • 見積段階と実際の発注額に差異がある
  • 複数案件にまたがる支払いが紐付かず集計が煩雑
  • 請求タイミングのズレにより、正確な粗利が把握できない

これらを解決するには、見積→発注→支払→仕訳までを一気通貫で管理できる仕組みが必要です。

ツール選定のポイントとしては:

  • プロジェクト単位で原価情報を登録できる
  • 発注書・請求書・支払処理が連動している
  • 原価の推移がリアルタイムに見える

このような仕組みがあると、「発注額の上振れに気づけなかった」「支払い処理が遅れて損失につながった」といったヒューマンエラーを最小化できます。

3. 見積・実績・粗利をひとつの画面で比較できる環境を作る

最も重要なのは、見積と実績を突き合わせ、利益構造をリアルタイムで把握できる環境です。

従来のイベント制作会社では、見積と実績の突合は以下のような“アナログ業務”に頼っていました:

  • エクセルで手作業による実績集計
  • 見積書との比較はPDFや紙ベース
  • 終了後の月次報告でしか粗利が分からない

このような業務では、スピーディーな経営判断は困難です。
理想は「プロジェクト別の収支ダッシュボード」を構築し、以下の項目をリアルタイムで見られるようにすることです。

項目内容
見積売上提案時点での売上予定額
実際売上実際に請求・入金された金額
工数原価社内スタッフの稼働時間×人件費
外注原価協力会社への発注金額
原価合計工数原価+外注原価
粗利売上 − 原価合計
粗利率粗利 ÷ 売上 × 100(%)

このようなダッシュボードを活用すれば、案件終了後すぐに「粗利率が悪化した原因」が特定でき、次の改善策につなげることができます。

4. システム導入で管理のすべてを一元化する

これらの実現には、エクセルや個別のツールでは限界があります。プロジェクト型ビジネスに特化したERPであれば、見積から工数、原価、粗利の管理までを一気通貫で可視化・集計・分析できます。

特にイベント制作業においては、以下のような機能が大きな強みとなります:

  • スタッフ別工数の自動集計
  • 原価のリアルタイム計上
  • プロジェクト単位の収支ダッシュボード
  • クライアント・案件別の収益性レポート
  • 部門・担当者別の粗利ランキング

属人的な管理から脱却し、再現性のある経営基盤を整えるためには、「情報の一元化」と「可視化」の仕組みが不可欠です。業種特化型ERPは、その実装を飛躍的に効率化します。


事例:収支を見える化して利益率15%改善に成功した事例

ここでは、収支管理システムを導入し、工数・原価・粗利の管理を強化したことで、経営判断の質と利益率の両方を大幅に改善したイベント制作会社の事例をご紹介します。

導入前の状況

株式会社Aでは、以下のような属人的な管理が常態化していました。

  • 工数はスプレッドシート上で各自が記録。集計は手作業で月次レベル。
  • 外注費の原価は経理が手入力でまとめ、営業や制作とは連携されていなかった。
  • 見積と実績の乖離が毎回発生し、その要因分析もできていなかった。
  • 粗利率の低下が続いていたが、根本原因が特定できず、対策も後手に回っていた。

経営層は「案件数は増えているのにキャッシュが残らない」という矛盾に頭を悩ませていました。

導入後の成果

  • 粗利率が改善
  • 赤字案件数が減少
  • 見積精度が向上し、値引き率が減少
  • プロジェクト別損益に基づく戦略的営業が可能に

加えて、「誰がどこにどれだけ稼働しているか」が明確になったことで、制作現場の働き方改革にもつながり、業務の属人化リスクも大幅に低下しました。

経営者のコメントとしては、

「数字に基づいて意思決定できるようになったのが最も大きな変化です。なんとなくの感覚で儲かっていると思っていた案件が、実は粗利率10%以下だった衝撃。そこから“数字の見える化”に本気で取り組むようになり、今では会議でも売上より粗利が先に出てくるようになりました。」

という声もありました。


今すぐ収支の“見える化”で経営改善を始めませんか?

イベント制作業界において、案件ごとに異なる原価構造や稼働体制を正確に把握することは、経営の健全性を保つうえで欠かせません。属人化したスプレッドシート管理や感覚値の判断から脱却し、経営者自身が数字を“見て、判断し、変える”体制を構築することで、企業全体の利益構造は劇的に改善されます。

プロカンは、プロジェクト型ビジネスに最適化されたクラウドERPです。見積から工数・原価・請求・粗利まで、すべての情報を一元管理し、誰でも「利益の構造」を把握・改善できる環境を提供します。

まずは、資料をダウンロードして、収支管理の最適化に向けた第一歩を踏み出しませんか?